リッチブラックとは?CMYKの数値とスミベタ・4色ベタとの使い分け

リッチブラックとは、インキを適切な割合で掛け合わせて表現する黒色です。単色インキよりも深みがあり、つややかな黒色に仕上げることができます。ただし、どのような印刷物にもリッチブラックが適しているわけではなく、「スミベタ」「4色ベタ」などとの使い分けも知っておく必要があります。
この記事ではリッチブラックの意味とおすすめのCMYK割合、使用時の注意点をご紹介。また、他の黒色との使い分けを解説します。
リッチブラックとはCMYKを掛け合わせた深みのある黒色のこと
リッチブラックとは、「CMYK」の4色を掛け合わせた黒色を指し、印刷でより深みのある黒を表現することができます。

印刷物の色は、「Cyan(シアン)」「Magenta(マゼンタ)」「Yellow(イエロー)」「Key Plate(キープレート=ブラック)」の各インキの割合(濃度)で決まります。リッチブラックは、「スミ」と呼ばれるKのインキを中心に他のインキと掛け合わせるため、より深みのある黒色になるのです。
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リッチブラックの設定は、IllustratorでオブジェクトのCMYKカラーの各数値を調整して行います。印刷会社によって推奨値は異なりますが、当社では以下の比率をおすすめしています。
リッチブラックを表現するときの当社おすすめのCMYK設定
| インキの色 | 濃度 |
|---|---|
| シアン | 60% |
| マゼンタ | 40% |
| イエロー | 40% |
| キープレート (ブラック) | 100% |
リッチブラックは深みのある黒の表現に優れる一方で、すべての黒に適しているわけではありません。次章から、リッチブラック以外の黒の表現と使い分けについても解説します。
スミベタ:Kのインキ100%の黒色のこと
CMYKにおけるCMYのインキを使用せず、Kのインキの濃度を100%に設定した黒色のことを「スミベタ」と呼びます。
スミベタは小さな文字や細い線の印刷に適しています。リッチブラックなどの複数の色を掛け合わせた黒では、小さな文字や線の場合、重ねたインキがずれる「見当ズレ」が生じやすく、滲んだような仕上がりになるためです。
一方、スミベタは広範囲の塗りつぶしには適しません。理由の一つは「墨ノセ(ブラックオーバープリント)」です。墨ノセとは、背面にある色と、前面にあるスミベタを重ねて印刷する処理で、印刷会社によってはK100%のオブジェクトは自動的にこの処理が行われます。スミベタを用いる際は、墨ノセの特性や印刷会社の規定を押さえておきましょう。
その他、広範囲のスミベタは「ピンホール」と呼ばれる色抜けが生じやすい傾向もあります。

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4色ベタ:CMYKをすべて100%にした黒色のこと
CMYKのインキをすべて100%に設定した黒色は「4色ベタ」と呼ばれます。黒色の中で最も濃くなるのが特徴です。
ただし、4色ベタはデザインデータには使用しないのが一般的です。4色ベタは使用するインキの量が多いため、乾きにくかったり、インキが乾ききっていない印刷物を重ねた時に下の印刷物のインキが上の用紙に写ってしまう「裏移り」、その他紙同士がくっついてしまう「ブロッキング」などのトラブルが発生しやすいためです。
4色ベタを使うのは、印刷の位置合わせに必要な「トンボ(トリムマーク)」などに限られます。当社でもトンボ以外は4色ベタを適用していません。なお、このトンボに設定される色のことを「レジストレーション(位置合わせ)カラー」といいます。

用途別の黒色の使い分け
印刷物において3種類の黒色を使い分ける際には、下記を参考にしてください。
印刷物における3種類の黒色の使い分け
| 黒色の種類 | リッチブラック | スミベタ | 4色ベタ |
|---|---|---|---|
| CMYK設定 |
当社の推奨値の場合 |
当社の推奨値の場合 |
|
| メリット | 深みのある黒が表現できる | 見当ズレの心配がない | より深い黒が表現できる ただし印刷会社によっては非推奨 |
| デメリット | 見当ズレを起こしやすい | ピンホールが生じやすい | 裏移りやブロッキング、 見当ズレが起きやすい |
| 主な用途 | 面積の広いオブジェクト、イラスト | 本文などの小さな文字、線 (単色インキやスミノセが活きるオブジェクト) | トンボ(トリムマーク) (デザインデータには使用しない) |
リッチブラックを使う場合の注意点
最後に、リッチブラックを適用する際に気をつけたい注意点について解説します。
【 小さな文字や線は見当ズレが発生しやすい 】
リッチブラックは、面積の広いオブジェクトやイラストへの使用には適しているものの、小さな文字や細かな線などに使用すると、「見当ズレ」が起きやすくなるので注意が必要です。
見当ズレは、紙の伸縮などの要因で、CMYKの4つの版が完全に同じ位置で重ならない状態を指します。見当ズレによって、輪郭がにじんで見えたり、印刷物に白い隙間ができてしまいます。
文字や線などの小さなオブジェクトについては、スミベタを使いましょう。

【 CMYの濃度を高くしすぎない 】
リッチブラックを設定する際、K以外、つまりCMYの濃度を高くしすぎないようにしましょう。CMYKのインキ量の合計が250%以上になると、裏移りやブロッキングが起きる可能性が高くなります。
特に、インキが乾きにくい用紙を使う場合には注意が必要です。前述の当社の推奨値を参考に、総インキ量を240~250%程度に設定することをおすすめします。
印刷物に合った最適な黒色を使おう
いかがでしたでしょうか。リッチブラックの意味と設定方法、他の黒色との使い分けについて解説しました。リッチブラックは面積の広いオブジェクトに使うことでより深みのある黒を表現できますが、一方で文字や線などの小さな要素にはスミベタを用いる方が良いケースもあります。
また、インキの濃度が高すぎたり、4色ベタでは裏移りなどのトラブルに繋がるため注意が必要です。
適切な使い分けと正しい設定値を押さえて、黒色の印刷データ作成をマスターしましょう。
なお、Illustratorによる印刷データのより詳しい作成方法は以下もご参考ください。また、当社の入稿サービス「スマートチェック」では、CMYK濃度の合計値や墨ノセといった項目を、自動で検知してお知らせする機能もございます。Illustratorによる印刷データの入稿をお考えの際には、ぜひご利用くださいませ。
リッチブラックに関するよくある質問
リッチブラックとは何ですか?
CMYKの4色のインキを掛け合わせて表現した黒色です。
これにより、濃淡や深みのある黒に仕上がります。リッチブラックのCMYK数値は?
「C:60%、M:40%、Y:40%、K:100%」が当社の推奨値です。
なお、インキの合計値が250%を超えると裏移りなどのトラブルが起きやすいので注意が必要です。リッチブラックのデメリットは?
小さな文字や線では「見当ズレ」が起きやすくなります。
重ねたインキがずれる見当ズレによって文字がにじんで見えるため、小さな文字や線はスミベタ(K100%)を用いるのが良いでしょう。また、CMYKの濃度の合計が250%を超えると裏移りなどのトラブルが起きやすくなります。







