阿波紙と版表現展2013 - イベントレポート - &グラフィック -

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イベントレポート 2013.12

1300年の歴史を有する徳島県の「阿波和紙」

その伝統を継承するとともに、新しい和紙文化を発信しているのが「アワガミファクトリー」ブランドです。主催する「阿波紙と版表現展」は2007年にスタート。国内外のさまざまなアーティストが「アワガミファクトリー」の和紙を使い、作品を制作・発表してきました。今までの開催地は東京でしたが、8回目を迎える2013年は本拠地・徳島、そして関西・京都で初開催。今回はその京都会場を訪問しました。

8者8様の個性が光る AIJPを使ったアート 手づくりのやさしいぬくもり…和紙に対するそんなイメージを覆されるような衝撃。本当にこれは和紙なのか。思わず間近で観察したくなるような作品が集った「阿波紙と版表現展2013 -和紙とTechnology-」。8名のアーティストが参加し、造形、写真、木版、リトグラフなど、さまざまなジャンルの作品が一堂に会した見ごたえある展示会でした。

そもそも「版表現展」は、版画用紙として海外での需要が高かった阿波和紙の、国内でのマーケットを広げるべく企画されたもの。近年は、インクジェットプリント対応の和紙「アワガミインクジェットペーパー(以下AIJP)を使うことを条件として企画されています。こういった展示会を今後も継続していくことで、AIJPの認知を広げ、新しい表現性・価値観をつくりだしたいというのが「アワガミファクトリー」の想いです。

続けていくことで、もっとおもしろくなると思います。

「阿波紙と版表現展2013」参加アーティストの人選を行ったのは、参加作家のひとりでもある京都市立芸術大学教授・木村秀樹氏。自身の展示作品は、炭の写真を「AIJP びざん(手漉き)」にジークレー・ド・グラフィックを用いて印刷。展開図から完全に切り離さないよう立体的に組み立てて、透明のアクリル板の上に展示し照明をあてています。上から見るだけでなく下から覗き見ることもできる、多様な見方が楽しめる作品です。

京都市立芸術大学教授 木村秀樹氏

ジークレー使用作品 木村 秀樹『Charcoal/Dice Zigzag』インクジェットプリント、シルクスクリーン、焼成、手漉き紙びざん(中厚口)

木村氏:版表現展ということでしたので、版画のことを分かっている人をベースに、旬のアーティストを集めました。彼らに具体的な指示はせず、展示スペースや使用する紙の条件、あとは「あなたのベストを出してほしい」ということを伝えました。私の作品コンセプトは、裏と表の区別がない作品であること。炭の写真はジークレーで、その裏はシルクスクリーンで印刷。ジークレーに関しては、炭の表現がうまくいったと思います。これまで、インクジェットプリントでの制作はほとんどしたことがありませんでした。大量生産も可能な印刷物は、美術作品として認められなかった時代が長い。版画の世界も手摺りが主流です。とはいえ、私自身は、インクジェットプリントのプロセスに関する利便性に抵抗を感じてはいません。インクジェットでも手摺りでも、おもしろいならそれでいい。ただ、作品としておもしろいものなのかどうかきちんと判断できる目を美術関係者はもたなければいけないのでしょうね。この版表現展も継続的にやっていけば、もっとおもしろい展示会になると思いますよ。

今回お話をお伺いした木村氏は、今年の3月で教授を退任されるといいます。退任記念展は回顧展が一般的である中、新たな作品を鋭意制作中とのこと。退任後はイチ作家として新たなスタートを切りたいと静かに語ってくれた木村氏。その話ぶりから穏やかな印象を受けますが、その内面はアーティストとしてのチャレンジ精神、制作への意欲に充ち溢れていました。

今回の版表現展に参加された8名のアーティストのうち、作風や制作意図をふまえて、木村氏含む4名の方に「ジークレー・ド・グラフィック」をご使用いただきました。

  • ジークレー使用作品 大島 成己『haptic green-ca.k.k.1301』インクジェットプリント、
アルポリック材にマウント、竹和紙/木の写真を細かく撮り分けてデジタル上でつなぎあわせ1つの全体的な木を作成。距離感が曖昧で見るほどに引きこまれるような作品。
  • ジークレー使用作品 加納 俊輔 『layer of my labor(awagami_01)2013』インクジェットプリント、忌部(厚口)、木材/かつて、和紙を乾燥させるために使われていた木板をリアルに表現。その姿・形は単純でありながらも見る者を惑わせます。
  • ジークレー使用作品 池垣 タダヒコ 『nontitle A4スケッチ×8』インクジェットプリント、ドローイング、竹和紙/近年描きためていたドローイングをプリントし折本形式で展示。実際に触れて観覧することが許可されていた作品です。
  • ツツミ アスカ 『in the forest #06』木版画拓刷り、ジクレー、裏打ち、ペイント、蝋引き/ジークレーによる和紙をベースに薄い和紙に木版による層を2枚重ね、蝋引きをすることで不思議な透明感と奥行き感を生み出しています。
  • 砥綿 正之 『光ー雪/LightーSnow』インクジェットプリント、楮白/雪面という一見コントラストのないイメージを、微妙なトーンでその質感と空間を表現されています。
  • Wayne Eastcott『Synchronicity 2』インクジェットプリント、シルクスクリーン、竹和紙/プレーンで素直な色再現が定評の竹和紙にシルクスクリーンを加えたミクストメディア。落款もアクセントとなり、作者のこだわりが感じられます。
  • 坂井 淳二『月の錯視13’-XI/Moon Illusion13’-XI』インクジェットプリント、リトグラフ、びざん/同じイメージをリトグラフとインクジェット出力により創作された3つのタイプの版表現。裏面にリトグラフで摺られた蛍光色が壁面に映る効果も際立ちました。

アワガミファクトリー 東京企画室
営業・販売推進

工藤 多美子 さん

版画は、インクジェットのような印刷技術ではなく、手加工による創作という歴史を長く歩んできたもの。そのためかインクジェットを使うことに抵抗を感じているアーティストも少なくありません。そんな中で、ジークレーをアートに活用いただけるのは、美術作品として使えるクオリティを感じてもらえた証ともいえます。

版表現を通じて、和紙にインクジェット技法を用いた今回の展示会。このような新しい表現に挑戦する人々の支えとなれるように、これからも印刷分野において尽力していきたいと思います。

現代アーティストのための新しいプリントテクノロジー 
GICLEE DE GRAPHIC(ジークレー・ド・グラフィック)